「資材置き場」で貸した土地にいつの間にか「小屋」を建てられていた!
~思わぬトラブルと法律的リスク~
今から20年以上前の話になりますが、弊社が所有している淡路島の土地を
資材置き場用として貸していたことがありました。
ところがある日、地元でいつもお世話になっている不動産業者さんから突然連絡が入りました。
「小屋が建っているけど、用途変更されたんですか?」
もちろん弊社としては、建物を建てる目的では一切貸していません。
驚いて現地を確認したところ、確かに簡易な小屋が建てられていました。
すぐに借主に連絡したところ、「すみません、勝手にやってしまいました。すぐに撤去します」
との返答があり、問題は早期に解決しました。
幸いスムーズに収束しましたが、ほんの軽い気持ちで土地を貸したばかりに
後になって大きなトラブルになるというケース。
実はこうしたケースは法律上きわめて厄介な問題に発展する場合があるのです。
では、このケースの場合、どのようなやっかいな問題を引きおこすのか
具体例を挙げてご説明いたします。
借地権が主張されるリスク
資材置き場として貸していた土地に、建物(小屋)を建てられた場合、
借主側が「これは借地権付きで借りていた土地だ」と主張してくることがあります。
当初の契約書に使用目的が資材置き場と記載し、建物を建てることは禁止の条項を入れていても
これを黙認していると貸主は建物を建てることに同意していると見なされる場合があるのです。
そして、これが通ってしまうと、貸主にとって非常に不利な状況になります。
以下に3つの具体的なリスクを詳しく説明します。
① 借地借家法が適用され、建物所有を理由に借地権の存続が認められる可能性
借地借家法は、建物所有を目的とする土地賃貸借契約(借地権)を手厚く保護します。
仮に借主が「建物を建てて使用している事実」をもって、「これは借地権である」と主張した場合、
裁判でその主張が認められる可能性があります。
【例】
● 使用目的は「資材置き場」だが、契約書に「建物禁止」の条項が曖昧だった。
● 何年も建物が存在し、貸主もそれを長期間黙認していた(例えば5年以上)。
● 借主が「地主の承諾のもと建てた」と証言する第三者が現れた。
このような状況では、裁判所が「黙示的に借地権を認めた」と判断する例があります。
② 契約解除が容易ではなくなる
前述の借地借家法が適用されると、貸主側は単純な契約違反では解除できなくなります。
借地権が成立した場合、解除には「正当事由」が必要となり、これは非常に高いハードルとなります。
【例】
● 貸主が「契約違反だから今すぐ出て行ってほしい」と通知しても、借主が「建物所有の借地権だ」と主張。
● 裁判では貸主側が強い正当事由(例:自己使用の必要性、借主の重大な契約違反、土地活用計画など)を示さなければならない。
● 結果として、何年にもわたって土地が返還されない状況になるケースがある。
③ さらに、その上建物があることで立退料請求など多額の費用負担が発生する恐れ
仮に借地権が成立した場合や、裁判所が「建物の存在」を一定程度保護する判断をした場合、
立退きのために立退料を支払う義務が発生することがあります。
これは、たとえ建物が簡易な小屋でも、借主が「投資した設備」「営業上の損失」などを主張すれば
ある程度の補償が必要と判断されるケースがあります。
ほんの軽い気持ちで貸したものの「ひさしを貸して母屋を取られる」という自体に発展します。
【例】
● 借主が「小屋の建築費に数百万円かかった」「ここで長年事業を行っていた」と主張。
● 裁判所が「原状回復は認めるが、そのためには一定の補償が妥当」と判断。
● 結果として貸主が数百万円単位の立退料や和解金を支払うことになることがある。