TELで
ご相談予約
  1. 不動産ブログ
  2. その他不動産全般
  3. 子や孫に相続させるべきでない不動産

子や孫に相続させるべきでない不動産

借家人に修繕費を持たせるデメリットとリスク

 

数年前、長年お付き合いのあるお客様からご相談を受けました。

 

このお客様は、大阪府郊外の私鉄沿線にお住まいで、沿線から大阪市内にかけて

小規模な戸建てや土地を複数所有されています。

 

これらの不動産は、ご両親が戦後から積極的に購入してきたもので

現在はお客様が自分で管理しています。

 

お客様はサラリーマンとしての業務と両親から引き継いだ不動産管理を両立していますが

長年賃料を据え置いてきた物件がいくつかあります。

 

ある日、賃料の値上げを電話で提案したところ

借主から「直接話したい。家主としてやるべきことをせずに

賃料の値上げとは何事だ。一度お会いしたい」と声を荒げていたようです。

 

そこで、この家主さんは一人での交渉は不安だと弊社に同行を求められたのです。

 

 

今回問題となった物件は、JRの駅から徒歩10分の住宅街にある

戦後間もなく建てられた一軒家です。

 

立地としては閑静な住宅街で良いのですが、建物は外観からは老朽化が進んでいます。

 

この物件は、この家主さんの両親が利便性が良いとのことで

30年ほど前に入居者がいることを承知で買い取ったとのことです。

 

 

 

入居者が内装をきれいに…2階も無断で増築

 

この借家の中に家主さんと一緒に入って行ってビックリ!

 

入居者は借主と若夫婦と孫の3世代での生活で、内装は入居者が個人負担で

リフォームを行い、リビングやキッチン、浴室なども綺麗に改装されています。

かなりの内装費をかけているようです。

 

入居者にとっては、借家を借りていると言うより持ち家感覚で

将来にわたっても子や孫の代までここで生活を続けたいという意向のようです。

 

さらに、驚いたことに2階部分には一部増築が施されており

この増築部分の固定資産税が借主に請求され、長年にわたり借主が負担しているとのことです。

 

この家主さんは長年の間、この借家の外観すら見ておられなかったようです。

 

賃貸契約書も家主とは交わしておらず、長年にわたって賃料の値上げはなく

相場の1/3の格安賃料が続いております。

 

その代わり、修繕費は借主が負担するという「暗黙の了解」があったようです。

 

しかし、今回の家主からの突然の値上げ提案に対し

借主から「修繕費を負担しているのに値上げとはどういうことか」という怒りの反応があり

借主は無断で行った改装や増築についても、家主の同意を求める必要がないと主張しました。

 

 

 

 

 

 

もし、家主さんに相続が発生したら

 

この家主さんは60歳を超えておられ、まだお若いのですが

仮にもし、ここで相続という問題が起こった場合、どうなるのでしょうか?

 

この家主さんには2人の社会人となった娘さんがおられます。

 

将来、この物件をこの娘さん2人のどちらかが引き継いだ場合

この口達者な借家人とのやりとりについては相当な労力と時間とを要するでしょう。

かなり精神的な疲労と不安が続くことでしょう。

 

建物の不具合があるたびに連絡を受け、それに対応を余儀なくされることも予想できます。

 

しかし、それに見合うだけの賃料の値上げはなかなか応じてもらえない可能性が強く

まさに『労多くして功少なし』です。

 

 

借家人付き物件の資産価値は?

 

この家主さんからすれば、立地も良いし資産価値はあると思っておられるようですが

入居者がいることで自分たちが住むこともできず、収益としても固定資産税や

今後考えられる修繕費用などを計算に入れると収益はほとんど期待できません。

 

入居者が退去してくれれば、立て替えや売却で良い物件にはなるのでしょうが

今回のケースのように、代々永住するつもりで大がかりにリフォームしている場合

それも期待はできないでしょう。

 

 

 

老朽化建物の地震のリスク

 

今後の問題として、自然災害による建物の倒壊なども視野に入れる必要があるでしょう。

 

多大なる修復費用や以前の私のブログにも掲載しましたが、地震などの倒壊による

入居者の死亡や負傷があった場合、家主側の責任を問われる可能性があります。

そうなると補償額も膨大になることが予想されます。

 

残念ながら、地震に対する人命や負傷を対象とする賠償責任保険は無いのが現状です。

 

 

 

 

 

今回、このケースで物件の所有を続けることは資産価値よりも

リスクの方が多大になるといえるでしょう。

 

こんな物件をかわいい子供や孫に絶対に相続するのはどうかと思うのですが・・・

自分の代できちんと決着をつけておくべきではないでしょうか?

 

方法としては次のことが考えられます。

《1》借家を賃借人に売却する。

《2》入居者が購入の意思がない場合は、プロの不動産業者に声をかけてみる。

《3》入居者に立ち退き費用を支払ってでも退去してもらう。

 

このケースの場合は、《3》は現実的に無理でしょう。

私も《1》か《2》を進言しましたが、これらについては

いまだ未解決のまま現在に至っています。

 

  

 

階の増築部分は貸主に名義変更を提言

 

今回の件で、私はこの家主さんに、2階の増築部分についてはこの先も

借主名義のままでは権利関係が複雑になり、後に大きな問題を引き起こす

可能性がある旨を説明しました。

 

建物の一部が借主さん名義のままだと、借主にこの所有権を後々主張される可能性があります。

 

そうなると解体や増改築、さらに売却の場合も借主の承諾を取る必要があり

大いに揉めることが予想されるからです。

 

家主さんは当初「入居者が勝手に増築しているのに何で自分が固定資産税まで

支払わないといけないのか?納得いかん。」と反論されていました。

 

しかし私がこれを先送りするデメリットを説明したところ、この家主さんも納得されたのでした。

 

借主さんが今まで支払ってきた固定資産税の全額を借主さんへ支払うことで

貸主借主の双方が合意に至りました。

 

その後、貸主の弁護士さんのもと合意書を交わし、名義変更は無事終わりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

記事の一覧