目次
管理費の値上げにどう向き合うべきか?
最近、ある中古マンションの所有者の方から相談を受けました。
その内容は「管理会社から突然、管理料の大幅な値上げ通知が来た」というもの。
具体的には、これまでの管理料の3割から5割の値上げという一方的な通告でした。
これは、マンションを所有している方々にとって無視できないニュースです。
なぜなら、管理費や修繕積立金は物件の維持・管理において欠かせない経費であり
その急激な上昇は不動産所有者の資金計画に大きな影響を与えるからです。
管理費値上げの背景とは?
このような管理費の値上げは、決して個別の問題ではなく
近年のインフレが不動産管理業界に波及している現象の一例です。
インフレと聞くと、一般消費者物価や食料品の値上がりを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、ここ数年、建築費や人件費の高騰が続いており、その影響が不動産管理のコストにも大きく現れています。
新築物件だけでなく、既存のマンションやビルの管理費にもこのコスト増が反映されるようになり
管理会社は収支のバランスを取るために料金の改定を余儀なくされているのです。
たとえば、マンション管理においては、以下のようなコストの上昇が見られます。
●建物の維持管理費用
建築資材(コンクリート、鉄鋼など)の価格が上昇しているため、定期的な修繕や外壁工事の費用が増加。
●人件費の高騰
管理人や清掃スタッフの人件費も上昇し、人材不足も相まって賃金が引き上げられている。
●保険料の値上げ
火災保険や地震保険などの保険料も値上がりし、管理会社にとって負担増。
「値上げ」か「管理会社変更」か? 選択肢の検討
今回の相談では、管理会社からの通知に「値上げに応じない場合は管理契約を解除する」という
厳しい条件も付けられていました。
こうした対応は決して珍しいものではなく、管理会社としても利益を維持するためにはやむを得ない判断かもしれません。
しかし、所有者側としては大きな悩みどころです。
特に賃貸マンションのオーナーにとっては、管理費の上昇は運営コストの増加につながり
結果として賃料の値上げや物件価値の低下など、入居者確保にも影響が出る可能性があります。
そこで、以下の選択肢を検討することが必要です。
●管理会社と交渉する
まずは、値上げの根拠やその妥当性について管理会社に確認し 適正な価格に引き下げる交渉を行いましょう。
コスト内訳を確認し、不必要な経費が含まれていないかを見極めることも重要です。
●他の管理会社に見積もりを依頼する
現在の管理会社に固執せず、複数の管理会社に見積もりを依頼し、条件を比較してみましょう。
最近では、管理内容を見直し、オーナーのニーズに合わせた柔軟なプランを提案する管理会社も増えてきています。
●管理内容の再検討
管理費の上昇を最小限に抑えるために、管理項目やサービス内容を精査し
一部のサービスを削減することでコストを調整できる場合もあります。

将来を見据えた対策を考える
インフレの影響が管理費や修繕積立金に及ぶのは今後も続くと考えられます。
特に、築年数の経過した中古マンションや賃貸物件では、大規模修繕工事のコストがさらに上昇する可能性が高く
早い段階で対応を考える必要があります。
●修繕積立金の見直し
現在の修繕積立金が将来の工事費に対応できるかを見直し、不足が予想される場合は早めに積立額を増やすことを検討しましょう。
●エネルギー効率の改善
電気代や水道代の削減を目的とした省エネ設備の導入を検討することで、長期的なコスト削減につながります。
管理費値上げの要因となる人件費
特に注目すべきは人件費の高騰です。
マンション管理の現場では、管理人や清掃スタッフの人件費が上昇しているにもかかわらず
管理会社側は十分な人員を確保できない状況が続いています。
理由としては、そもそも管理業務に従事する人材が減少していることに加え
待遇を改善しても魅力を感じてもらえないため、他業種に人材が流出してしまうからです。
例えば、多少賃金を引き上げて募集をかけたとしても、条件面で他の業界と比べて劣ると判断され
結果的に人員確保に失敗してしまうという事例も少なくありません。
こうした人材不足は、最終的に管理業務全体のサービス品質に影響を与え
物件所有者にとっての不安材料となり得るため、管理会社としてもサービスを維持しながらも
コストをカバーするために、やむを得ず管理料を値上げせざるを得ない状況が続いています。

管理費値上げの歴史的背景 「デフレ時代の泣き寝入り」
また、今回の管理料値上げにはもう一つ見逃せない歴史的背景があります。
それは、バブル崩壊後の長期にわたるデフレの影響です。
バブル経済の崩壊後、日本経済全体がデフレの渦に巻き込まれ、不動産業界も例外ではありませんでした。
この時期、多くの管理会社は、物件所有者(依頼者)からの要望を受け、相次ぐコストカットの圧力にさらされてきました。
依頼者側も賃料や管理費を削減する動きが強まる中、管理会社は泣く泣く安い管理料を受け入れ
採算の取れない状況でも物件管理を続けていたという実情があります。
その結果、当時の管理会社は利益率が非常に低く、十分な利益を確保できない状態が長く続いていました。
さらに、業務を遂行するための人件費や建材費の上昇があっても、物件オーナーへの請求額を増やせずに
やむなく赤字で業務を回すケースも多かったのです。
このデフレ時代に培われた「安さ重視」の文化が管理会社の経営を圧迫し
労働環境の悪化やサービスの質の低下を招いたとも言えるでしょう。
こうした状況を考慮すると、現在のインフレと人件費の高騰は、ある意味で「長年の歪み」が表面化した結果とも言えます。
管理会社が値上げを求めている背景には、過去の不均衡を是正し
適正なサービスを提供するために必要なコスト構造への見直しも含まれているのです。
まとめ:インフレ時代にどう備えるか?
インフレの影響が不動産管理費用にまで及ぶ今、マンション所有者や賃貸マンションのオーナーは従来の管理プランを見直し
長期的な資産運用を見据えた対策を講じる必要があります。
値上げ通知が来た場合も慌てず、冷静に管理会社との交渉や条件の比較を行い、自身の資産を守るために最善の選択をしましょう。
皆さんも、もし今の管理費や修繕積立金が適正かどうか、不安に感じていることがあれば、ぜひ一度、専門家に相談してみてはいかがでしょうか?
また、他のオーナーの方々はこうした状況にどのように対応しているのか、気になるところです。