地方都市の商店街に再び灯をともすには・・・
最近ネットで目にしたニュースに、少し嬉しい気持ちになりました。
かつて「柳ヶ瀬ブルース」で全国にその名を知られた岐阜の繁華街、柳ヶ瀬商店街。
長らく “シャッター通り” の象徴のように語られてきましたが、地域の商店街関係者の努力によって
少しずつ新しいお店が増え、以前の寂しいイメージから脱却しつつあるという情報を耳にしました。
十数年前、私の趣味のひとつであるカナリアの飼育仲間が岐阜に住んでいたため、
その方の自宅を訪れた際に柳ヶ瀬を訪れる機会がありました。
柳ヶ瀬商店街は名鉄やJRの岐阜駅からは少し距離がありますが、数多くのアーケード街が連なり
地方都市としてはかなり大きな繁華街です。
さすが歌にもなるだけのことはあるなあと感心したものの、目にしたのは見事なまでの “シャッター通り” 。
町全体に哀愁が漂っておりました。
かつての繁栄を知っている人にとっては、その衰退ぶりに大きなショックを受けることは間違いありません。
昼間だったということもありますが、
「ここまで町が衰退してしまえば、再び賑わいを取り戻すのは難しいのでは」と感じたのを覚えています。
地方都市の「中心市街地の空洞化」
こうした地方都市の商店街の衰退は、岐阜に限られた話ではありません。
この20年ほどで全国の地方都市が抱える「中心市街地の空洞化」はまさに共通の課題です。
大型商業施設の郊外進出、車社会の進展、ネット通販の普及・・・
時代の流れと言ってしまえばそれまでですが、自治体も有効な対策を打てないまま、
時間だけが過ぎている印象を受けます。
商店街の衰退は、単に「お店が減って寂しい」だけの問題ではありません。
私の個人的な考えですが、地元商店街の活性化は地域衰退に歯止めをかけ、
最終的には人口減少や少子高齢化の問題解決にもつながると考えています。
ご存じのように、少子化は加速の一途をたどり、2024年には出生数がついに70万人を下回りました。
少子化が社会問題として認識され始めたのは今から30年も前のことです。
なぜ政府はもっと早く、真剣に取り組まなかったのか・・・
この点については、後の世代に大きな禍根を残す怠慢だったと感じています。
団塊ジュニア世代がすでに50代を迎えた今、もはや人口減少を完全に止めるのは難しい状況です。
地方の若者たちは、東京、大阪、名古屋、福岡などの大都市にどんどん移住しています。
仕事も見つかりやすく、娯楽や生活インフラも充実していて刺激のある暮らしができます。
さらに出会いや情報にも恵まれています。
一方で地方都市はどうでしょうか。
駅前は閑散とし、商店は廃業、シャッターが並ぶ通りが続きます。
こんな町に「ここで暮らそう」と思えるでしょうか?
都市部への流出が進むのも当然の結果かもしれません。
また高齢者にとって、徒歩圏内で買い物や交流できる場がなくなることは、日常生活の困難さに直結します。
一方で、商店街が元気な町は、観光客にとっても移住希望者にとっても魅力的です。
地元で育った子どもたちが「いつか帰りたい」と思える町であり続けるには、
生活の中心となる場所に活気があることが必要なのではないでしょうか。
商店街衰退の背景と課題
商店街の衰退の背景には、いくつかの要因があります。
まずは、大型ショッピングセンターの登場と車社会の進展です。
郊外に広い駐車場を備えた施設ができると、人々はどうしても利便性を求めてそちらへ向かってしまいます。
歩いて回ることが基本の商店街は、「ついでに寄れる」便利さでは太刀打ちできません。
また、店舗の廃業が相次ぎ、結果的に人が減り、さらにお店が減るという悪循環も深刻です。
特に車を持たない高齢者や学生などにとって、商店街が衰退することは生活そのものの不便さに直結します。
さらに駅前商店街の衰退も見逃せません。
かつては町の “顔” として観光客を迎え、地元の人たちの交流の場でもあった駅前が閑散としてしまうと
町全体が元気を失っている印象を与えてしまいます。
なぜ商店街の再生が必要なのか?
こうした現状を踏まえ、商店街を再生させる取り組みは、
地方都市の未来にとって非常に大きな意味を持つと思うのです。
近年では都会での子育てや生活コストに限界を感じる若い世代の間で、
地方での暮らしが見直されつつあるようにも感じます。
自然の中での生活や地域コミュニティに価値を見出す人が増えてきました。
しかし、その地方に「買い物が不便」「町に活気がない」といった問題があれば、
移住への一歩はなかなか踏み出せません。
だからこそ、商店街という “生活の場” をもう一度見直し、暮らしの拠点として再生させることが
地方への移住促進や定住支援にもつながるのではないでしょうか。
私の提案:街に新しい価値を加える
商店街活性化のためには、まず若者や子育て世代が興味を持つような店舗を増やすことが鍵です。
リモートワークに対応したカフェスペース、地域特産品を活用したクラフトショップなど
「行ってみたい」「体験してみたい」と思える場所が増えれば、人は自然と集まってきます。
また、「住まい」と「商い」の連携も重要です。
例えば、空き店舗をリノベーションして住居兼店舗として若い世代に貸し出すなど、
暮らしとビジネスが一体化した町づくりも可能です。
さらに外部との連携も欠かせません。
移住促進制度や起業支援、IT企業とのコラボ、大学・専門学校との連携など、
外から人を呼び込むための仕組みづくりが必要です。
商店街の未来は「昭和のレトロの懐かしい場所」で終わらせるのではなく
「これからの暮らしの拠点」として生まれ変わるべきです。
地元に住む人々やその場所を訪問する私たち一人ひとりが
「少し不便でも地元で買い物をしよう」「小さなお店を応援しよう」と
意識することがじわじわと町に元気を取り戻す力になっていくのだと思います。
柳ヶ瀬商店街が今後どのように再生されていくのか、私も見守っていきたいと思っています。
次回訪れるとき、また新たな変化が見られることを楽しみにしています。