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しっかりと市場調査をした上で・・・
近年、不動産の活用方法として「コインランドリービジネス」に関心を持たれる方が増えています。
実際、私たちも一時期はこの分野への参入を真剣に検討したことがありました。
業者さんからは「投資回収は7〜8年」「ランニングコストは軽微で、空きスペースの有効活用に最適」
といった甘い話を聞くこともあります。
でも、ちょっと待ってください。
本当にその立地で、期待通りの売上が出るのでしょうか?
業者のシミュレーションは“理想形”であることが多い
私たちが受けた提案の中には、年間稼働率90%以上、1日あたりの平均利用者数〇〇人・・
という数字を前提にした収支シミュレーションがありました。
しかし実際には、「そこまで需要があるか?」と疑問に思う立地だったり、周囲に競合店がいくつもあったりすることも・・
あるお客様は、業者の話を信じてオープンしたものの、想定の半分以下の売上しか得られず、わずか3ヶ月で撤退。
設備のリース料、家賃、電気代、水道代がかさみ、結局は借金だけが残ってしまったというケースもありました。
立地調査と“セカンドオピニオン”のすすめ
こうした失敗を防ぐために何より大切なのは、「立地調査」と「第三者の意見を取り入れる」ことです。
駅からの距離、住宅密集地との距離、車の通りの多さ、近隣に競合店があるかどうか?これらの条件が売上に直結します。
また、収支シミュレーションについても、不動産や小売業に詳しい第三者、現在コインランドリー経営を
行っている方などに見てもらうと、想定が甘いポイントが浮き彫りになることもあります。
コインランドリーは不動産系に比べ少額の投資で利益率は高い?
コインランドリービジネスは賃貸マンション経営と比べて、2,3千万程度の定額で行えるため
比較的リスクは小さく、そのわりに経営も楽だという先入観をお持ちの方が多いようです。
私も以前このような感覚があり、このビジネスに参入しようかと真剣に考えたことがありました。
賃貸マンション経営というと投資金額は億単位。その上、管理上の清掃やメンテナンス、
入居者への対応などの手間や経費はかなりの額に及びます。
それに比べ、コインランドリーは「機械の設置さえ行えば、勝手に稼いでくれるのでは・・」と甘い期待を寄せておりました。
弊社でも綿密に調査を行いました
実は弊社でも、管理物件のガレージや空きテナントの1階部分を活用し、
コインランドリーを導入できないかと検討したことがありました。
複数の業者に見積もりを依頼し、実際に営業中のコインランドリーを朝・昼・夜と
時間帯を分けて何度も現地に見に行きました。
さらに、「稼働率が高い」といわれる地域にも足を運び、立地の条件や人の流れなどもチェックしました。
この調査には約6ヶ月近く時間をかけました。
確かに、そうしたエリアは人口も多く市場も大きいのですが、それと同時に競争も非常に激しいのです。
他店の設備を見ると、最新の洗濯乾燥機を導入していたり、店内も清潔で明るく、付加サービスも充実しており、
「このエリアで勝負するには相当の設備投資が必要なのでは?」という懸念が出てきました。
また、実際にコインランドリーを経営されている方にもお話を伺ったところ、
「ガス代、電気代、水道代がとにかく高い。一定以上の稼働率がないととてもじゃないけど黒字にはならない」
というリアルな声も聞きました。
やはり現場の声というのは非常に参考になります。
意外と盲点になるのは、月々のランニングコストの大きさです。
実際に具体的な検討に入ると家賃にガス代や電気代、水道代などの光熱費の月々の持ち出しを考えるとコストは膨大です。
最悪の場合、毎月大赤字で維持するためには新たな資金の投入が必要となる可能性もあり、
決してリスクが少ないビジネスとは言えないのです。
「7年あたりで初期投資を回収できますよ」という業者のシミュレーションが甘かったせいだと
業者の責任にしたところで、ビジネスはすべて自己責任です。
業者のシミュレーションを鵜呑みにしてその結果、大赤字を出したところで泣きついていくところはありません。
一方で、私の同業の不動産業者でコインランドリービジネスで成功を収めている方もいるのも事実です。
その方は、次々と営業エリアを広げで長年培ってきたマーケティングや営業ノウハウを発揮して
黒字経営を定着させてきております。
しかし、ここに至るまでは試行錯誤で赤字も出し苦労されてきたようです。
その方から教えていただいたポイントをお伝えさせていただきます。
成功のための3つのポイント + よくある落とし穴
《1》立地調査の徹底
駅徒歩距離・住宅密集度・車通行量・競合店舗の有無などを実地でチェック。
《2》セカンドオピニオンの活用
不動産や小売業に詳しい第三者にも収支検証を依頼し、前提条件を再確認。
《3》保守的なシミュレーション
売上は低め、コストは高めに見積もり、最悪ケースを想定して計画を立てる。
+ 以下は実際に経営してから気づくことが多いポイントです。
● 故障対応やトラブル処理:無人でも利用者からの問い合わせやトラブル対応が発生。
● 清掃・衛生管理:店内の清潔さが評判に直結し、放置は信用失墜につながります。
● 天候や季節による売上変動:梅雨や花粉の時期に伸びる反面、晴天日や寒冷地では利用減が起こります。
● 両替機・釣銭機の管理:釣銭不足やお札の詰まりは顧客満足に直結し、現金管理も重要。
● 盗難・イタズラ対策:無人店舗ゆえに防犯カメラや警備対策が必要で、コストがかかります。
● 広告・集客施策:立地条件が良くても、地道なPRやチラシ、SNS活用など集客努力は不可欠です。
結論から申し上げると、弊社はコインランドリービジネスへの参入は見合わせることにしました。
成功に導くにはまだ多くの経験、ノウハウが必要と感じた次第です。