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消えていくローカル鉄道に寄せる寂しさ
近年、日本の地方都市の衰退が深刻化しています。
少子高齢化と人口減少、そして自動車中心の社会構造が進んだ結果、地方の鉄道網は大きな打撃を受け、
多くの路線が廃止に追い込まれています。
私自身、学生時代から旅行するのが大好きでした。
特に北海道には憧れが強く、周遊券を片手に鉄道で旅をするのが楽しみでした。
この周遊券というのは、北海道内を一定の期間自由に周遊することのできる非常に経済的なチケットなのです。
これを使い、北海道の雄大な風景を満喫できるローカル線で旭川や稚内に向かう宗谷本線、帯広や釧路、
根室に向かう根室本線に乗るのが楽しく、何度も旅をしました。
日本の最果ての町、稚内や根室に到着したときの感動は、今も忘れられません。
窓の外に広がる大地、静かな駅、季節ごとに表情を変える風景…あの旅の記憶はいまでも鮮明です。
しかし、現実にはそれらの鉄道の存続が危ぶまれ、列車の本数は減り、駅も次々と無人化・廃止されています。
JR北海道は赤字路線の廃止を検討しているとのことで、万一これらの路線が廃止されると、
日本最北の町・稚内や最東端の町・根室までが鉄道で行けなくなってしまいます。
地元の人はもとより、旅行者も不便を強いられることになり、沿線一帯の過疎化に拍車をかける結果となります。
なんとか、これらを存続させる手立てはないのでしょうか?
日本はまさに観光資源の宝庫
私は20代の頃、国内にとどまらず、バックパッカーとしてヨーロッパも鉄道で旅しました。
スイス、スコットランド、フィンランド、オーストリア、フランス、スペイン、ポルトガルと
多くの国を巡り、まるで絵画のように美しい車窓風景にたくさん出会いました。
でも正直なところ、日本の鉄道から見える風景は、それらに決して見劣りしないと感じています。
特に東北、北海道、九州の車窓からは、日本ならではの四季折々の自然、田園風景、海岸線、
山々の連なる光景など、息をのむような景色が広がります。
各沿線には地域ならではの特産品や、新鮮な魚や野菜を使った食文化、個性的な町並みがあり、
その土地の情緒が凝縮されています。
日本はまさに観光資源の宝庫だと感じています。
そして、それらの観光スポットをつなぐ鉄道での旅は、単に目的地に着くだけでなく、車窓の風景や
車中の雰囲気を楽しむという「移動することそのもの」が特別な体験になるのが素晴らしいと思うのです。
「オーバーツーリズム」の問題が現実のものに・・
一方で、弊社は大阪城の近くに事務所を構えておりますが、大阪城の外国人観光客はコロナ以降急増しており
入場するのに40分近く待たされるという事態です。
先日も東京へ出張しましたが、予想していたとはいえ、外国人観光客の多さに驚かされました。
浅草や渋谷、各ターミナル駅や車内の混雑が、外国人観光客によって際立っている状況でした。
京都の神社仏閣も同様で、観光地はどこへ行ってもインバウンドで賑わっており、正直「ここまで来たか」と驚いたほどです。
地域によっては住民が日常生活に支障を感じるレベルで、ホテルの宿泊費は高騰し、公共交通機関も混雑が常態化。
いわゆる「オーバーツーリズム」の問題が、現実のものとなっています。
「地方の宝」をもっと海外の人々に伝えるべき・・・
これだけ東京・大阪・京都に集中している観光客を、うまく地方に分散できないものでしょうか?
鉄道が大赤字で存続が危ぶまれている北海道の釧路、稚内、網走といった地域には、
世界遺産の知床半島、摩周湖や阿寒湖、大雪山のような自然美が広がっています。
さらに、地元ならではの新鮮な魚介や郷土料理は、外国人観光客にも魅力的に映るはずです。
こういった「地方の宝」を、もっと海外の人々に伝え、訪れるきっかけをつくるべきだと感じています。
特に鉄道は、観光の導線として非常に優秀です。
移動そのものが「体験」になり、景色を楽しみながら目的地に着く。しかも環境にも優しい。
日本の地方鉄道は、ただの移動手段ではなく、地域の物語を紡ぐ存在だと思うのです。
「地方の魅力発信×鉄道の活用×インバウンド誘致」の可能性
もちろん、課題もあります。
アクセスの不便さ、言語の壁、情報の不足など、外国人旅行者が地方に足を運びにくい理由は少なくありません。
それでも、地域と行政、観光業界が一丸となって
「地方の魅力発信×鉄道の活用×インバウンド誘致」に取り組めば、大きな可能性が広がるはずです。
鉄道が観光だけでなく “地域体験の起点” になるような仕組みも考えてみてはどうでしょうか。
駅前にある小さなカフェや古本屋、シェアハウス、地元食材を使った食堂。
若者が「面白そう」「居心地よさそう」と感じるような場所が、点ではなく線となって地域に広がっていけば、
それ自体が旅の目的になり、やがては移住のきっかけにもつながっていくのではと思うのです。
そのためにも、地方にインバウンドを呼び込む取り組みと同時に、日本人の学生や若者が現地で活躍できるような
ボランティアや体験プログラムを都市部から募集するのも一つの方法ではないでしょうか。
たとえば、駅前や商店街の活性化に向けて、空き家を自治体が借り上げる、あるいは家賃補助の制度を整備して
「地方で働きたい」「何かに挑戦したい」と考える人を受け入れる仕組みをつくることも重要です。
未来の大きな可能性につながっていく・・・
さらに、子育て世代が安心して移住できるように、保育所の整備や教育・医療環境の向上も
並行して進めていけばどうでしょうか。
これをきっかけに、暮らしにまでつながる仕組みが整えば、鉄道の沿線に息づく町々が、
もう一度新しい命を吹き込まれていくのではないでしょうか。
地方が活気づくことが、ひいては少子化対策にも一役買うのではないかと思うのです。
地域に根差した小さな変化の積み重ねが、未来の大きな可能性につながっていく・・・私はそう信じています。