先日、とあるサイトで
「スペインを訪れる旅行客が年間9,000万人に達している」
という情報を目にしました。
ふと、日本は今どうなのだろうと考えてみると、現在、日本も年間3,000万人を超える
インバウンド需要があり、まさに観光立国への道を歩んでいる最中です。
こうした動きはもちろん、外貨の獲得や国内景気の押し上げといった良い面があります。
その一方で、宿泊費や飲食費の高騰、人手不足、さらには「オーバーツーリズム」と呼ばれる現象を引き起こし
地元住民にとっては暮らしにくさが増しているという側面も指摘されています。
たとえばスペインの観光都市、バルセロナやマドリードでは、観光客急増により
ホテルの供給が追いつかず、一般の住宅が次々と民泊に転用されているとのことです。
その結果、地価や賃料が大幅に上がり、地元住民が住宅を確保しにくくなるという問題が社会問題化しているようです。
さて、この現象、日本でも徐々に見受けられるようになってきたと思いませんか?
特に東京や大阪といった大都市では、こうした傾向がじわじわと進行しているように感じます。
先日も私の知り合いから、このような相談がありました。
大阪駅に比較的近い福島駅徒歩5分の1LDKマンションを5年前に家賃10万円で借りたのですが
このたび突然、家主から「家賃を14万円に値上げする」と一方的通告を受け、大変驚いて
弊社に相談に来られたのでした。
これまで大阪のワンルームマンションは供給過多で、賃料も頭打ちの状況でした。
しかし、インバウンド需要の高まりでホテル料金が高騰したことを受け、
一般の賃貸からより収益性の高いマンスリーマンションや民泊への転用が進んでいます。
例えば、通常の賃貸では月6万円ほどの家賃しか取れないワンルームでも、
短期滞在向けの宿泊施設にすれば、通常賃貸の2倍以上の収益が見込めるケースも珍しくありません。
こうした背景から、交通の便が良いエリアを中心に普通賃貸よりも民泊やマンスリーマンションへの
用途変更が進んでいる印象があります。
その影響で、以前は空室がなかなか埋まらなかった狭いワンルームでさえ、今では供給不足気味となり、
単身向け賃料も下げ止まり、むしろ上昇傾向にあるようです。
インバウンド需要の拡大は、日本の経済にとって大きな追い風となっています。
大阪でもその恩恵を感じる場面が増えてきました。
しかし、その裏側では宿泊需要の高まりが不動産市場に少なからず影響を与えており、
特にワンルームマンションは住居から宿泊への用途変更や賃料上昇といった変化が進んでいます。
今後さらにインバウンドが増加すれば、こうした動きが一層加速する可能性もあります。
もちろん、収益性の向上は大家さんや投資家にとっては歓迎すべきことですが、地域の住みやすさや
住宅の確保という観点では慎重なバランスが求められるところでもあります。
「今後、都市部のあまりの賃料高騰によりサラリーマンや学生が賃料的に手が届かなくなり、
郊外に住まざるを得ない時代が来るかもしれない」と私はかすかに危惧感を持っております。
大阪の街が観光客にも住民にも魅力的な都市であり続けるために、私たち不動産業界としても
これからの動きをしっかり見極めていく必要があるかと思います。