現金は大歓迎!手のかかる不動産(負動産)はいらない
一般に親の資産を子供が引き継ぐ場合は、
「現金は大歓迎。不動産は収益が上がれば歓迎するけれど、
手間のかかる儲からない不動産(負動産)はいらない。」 これが現実です。
築古物件の管理や修繕、空室対策は若い世代にとって大きな負担に感じられやすく
相続しても「資産」ではなく、相続される者にとっては「負債」と見なされることもあるのです。
そのため、これを子供に相続させる場合に、将来の相続後に相続人の間でこの物件を巡り
大きなトラブルを引き起こす原因となるケースが多いのです。
売却の提案、そして強い拒絶
そこで私は、選択肢の一つとして
「お子様がそうおっしゃっているのなら、売却も視野に入れてみてはどうですか?」とお話ししました。
しかし、家主さんは強い口調でこう返されました。
「ここは父の代からの物件で、亡き父がここで工場を経営していた思い出の場所。
この土地には、父が郷里から裸一貫で大阪に出てきて私たち家族を支えてきてくれたという
かけがえのない思い出がある。この物件を私の代で手放すなんて考えられない。」
と目には涙を浮かべて語っておられるのでした。
この家主さんの心情を察すると、私も心打たれるものがありました。
今回のケースのように、親から引き継いだ不動産に対しては、数字だけでは割り切れない
強い “感情的な価値” が込められていることが多いのです。
たとえ収益が上がらず、精神的・経済的な負担があっても
「自分の代で終わらせるわけにはいかない」と考える家主さんは少なくありません。
私はこの家主さんに「承知いたしました。お父様の形見の物件なのですね。
それを引き継いで行かれるのは、ご両親も喜ばれると思いますよ。」とお答えし、
いくつかの提案をさせていただきました。
この際には、長男夫婦にも同席いただいてご説明させていただきました。
再生提案:現金を活用したリニューアル工事
この家主さんは、いままで貯蓄されてきた現金資産もある程度お持ちでしたので、
私は以下のようなリニューアルプランを提案しました。
● 外装の塗装による第一印象の改善
● 共用部(階段・照明・ポストなど)の補修
● 玄関ドアやインターホンの交換
● 退去者が出た後の室内のリノベーション。2DKの間取りを1LDKに変更。リビングを13畳に。
「思い出のある建物だからこそ、今の時代に合った形に手直しして、もう一度
入居者に選ばれる物件にしていきましょう。」とお伝えしたところ、同席している長男も賛成してくださり、
なんとか前向きに検討された結果、半年後に工事に着手される運びとなりました。
改装費として3000万円に近い費用をかけられました。
この大規模な改修工事をした後、今まで半年以上空室だった3部屋が、
従来の賃料よりも1万円アップで3室とも3ヶ月で入居者が決まりました。
これには、この家主さんも驚いておられたのが印象的でした。
(2)子供が引き継ぎたがらない築古マンション【大阪府北部】 … 続く