人生に真剣に向き合うことの重要性
私は以前、97歳の大変元気な家主さんに
「相続対策をされていますか?」と親切心から尋ねたことがありましたが
「私はまだまだ元気で生きるつもりなのに・・・」と厳しく叱られてしまいました。
それ以来、ご年配の方に相続対策の話題を持ち出すことに
少し気が引けるようになってしまいました。
確かに、人生100年時代と言われる現代では
「まだまだ自分は長く生きるつもりだから、遺言書なんて必要ない」
「今書くのは時期尚早だ」という考えを持つ人は少なくありません。
しかし、遺言書を書くという姿勢は、単なる未来の備えではなく
人生を見つめ直すための貴重な機会だと私は感じています。
私は現在69歳で、健康には恵まれており、長生きするつもりでおります。
しかし、人間誰しも先のことは分かりません。
いつ病気や不慮の事故で亡くなるとも限りません。
それを常に念頭に置くことによって、残りの人生に真剣に向き合う重要性が
最近ようやく分かってきたように思います。
こうして有限である人生の時間を意識することで、今をどう生きるかを
より深く考えるきっかけになるように思うのです。
富裕層は貯まるのが大好き?
私は仕事柄、家主さんや地主さんをはじめ富裕層の方々とのお付き合いが多いのですが
その中には長年の節約志向が身につきすぎて、貯蓄ばかりに注力し
消費を極端に控える方も多くいらっしゃいます。
こうした方々は、長年の倹約によって大きな資産を築き上げてきたのだと思いますが
私から見ると「そこまでして貯め込んでどうするのだろう?
もっと残りの人生を充実させるために積極的にお金を使ったらどうだろう?」
と思うことが少なくありません。
せっかく築いた資産であれば、人生を楽しみ、心豊かに過ごすために使うことも
立派な選択肢の一つなのではないでしょうか。
こうして貯め込んだ資産が相続によって子供や孫に渡る際
親族間で遺産を巡る大きなトラブルに発展するケースも見てきました。
お金を貯め込むより自分の人生の充実を
資産は生前に有効に活用することで、自身の充実した人生を叶える手段となり得ます。
特に、現金化しにくい不動産は売却して他の換金しやすい金融資産にして
家族旅行や趣味など大いに人生を楽しむなど充実した晩年を送られたら良いと思うのです。
60歳を超えると、若い頃とは異なり、平均寿命までの時間が限られていることに気づかされます。
こうした中で、家族の幸せや健康、そして自分自身の人生の充実について考えることは
決して目を背けてはいけないことだと思うのです。
遺言書を作成する効能 「人生を充実させる」
遺言書の作成には、単に「財産の分配」を定めるだけでなく
自分の人生をどのように締めくくるかを意識し計画することで
日々をより豊かに生きるための手段としての役割があります。
例えば、財産をどう活用するか、子どもや孫に何を残し、どの資産を誰に引き継がせるか
といったことを考える過程で、自分の生き方や価値観、家族の将来を考える絶好の良い機会と考えます。
具体的には、遺言書を通して次のようなことが実現できます。
◆財産の活用方法の見直し
預貯金や不動産、有価証券などの資産を、自分の健康維持や生活の質を高めるため
または趣味や自己投資に使うか、子どもたちにどの程度残すかといった点を改めて考えることができます。
◆家族に対する配慮の明確化
遺言書により、家族への思いや感謝の気持ち、財産に対する考え方を示すことで
相続時に無用なトラブルが生じることを防ぐことができます。
また、家業の継承や、誰がどの役割を果たすのかなども明記することで、家族全体が納得しやすくなります。
このように遺言書の作成は、生きている間の財産の使い方や人生のプランを見直すきっかけとなり
より意義のある形で財産を活用できるようになるのではないでしょうか。
遺言書はいつでも変更が可能
遺言書は時間の経過とともに家族関係や親族との人間関係や状況が変われば
必要に応じて変更や更新することができます。
例えば、前回の飲食店の場合、兄弟4人に均等に相続させようと思っていたが
長男夫婦に8分の5を相続するよう変更したい場合、新しい遺言書を作成すれば良いのです。
この場合、新しく作成された遺言書が正式な遺言書となります。
遺言書を持つことは、将来の不安を軽減し、心の安定を保つためにも役立つと思います。
また、自分の人生に対して責任を持ち、家族に思いやりを示す行動であり
残された家族が安心して次の一歩を踏み出せるような環境を整えるための最良の手段です。
遺言書を持つことは、家族や親族のためだけでなく、自分のためでもあると私は思います。