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不動産所有と近隣付き合いの大切さ
~境界確定が困難になると資産価値に大きな影響が~
不動産、特に土地を所有している方にとって、普段から近隣との良好な関係を
築いておくことは思っている以上に重要です。
なぜなら、土地を売却する際には、隣地との「境界確定」の作業が必要になることが多く、
これには隣地所有者の協力、具体的には印鑑や印鑑証明書の提供が必要だからです。
しかし、過去にトラブルがあったり、日頃の付き合いが希薄であった場合には、
こうした協力を得るのが極めて困難になり、最悪の場合、売却そのものに支障をきたします。
今回は、弊社が大阪府の北摂地域で実際に経験した「苦い事例」をご紹介します。
大阪府北摂での売却案件で起きたトラブル
ある日、弊社の長年のお客様より、
「亡くなった叔父の所有する土地(古家付き約20坪)を売却してほしい」
とのご依頼を受けました。
現地はかつて連棟長屋だった区画で、過去にすでに切り離し済み、この依頼者の物件は
隣地の境界と思われる柱を残して、そこからわざわざ、さらに控えて家を建てていました。
その分この隣の家の間口は狭くなっている状況でした。
この物件のある地域は、大阪府下でも環境も良好といわれる地域で、
以前お付き合いのあった建売業者に声をかけると「ぜひ購入したい」と前向きなお話がありました。
ただし、契約の条件として「隣地所有者との境界確定」が必須ということで、
早速、土地の測量と境界の確定の話し合いをするために、隣地の方にご挨拶に伺いました。
ところが、そこで待っていたのは思いがけない怒りの声でした。
「あの人には本当に困らされた」と隣地の主張
隣地の方は、私たちが事情を説明するなり、玄関先でかなりの剣幕で
「今頃何しにきているんだ!」と追い返される始末。
そこで、事情を説明させていただいている間に、隣地所有者も冷静になられ、
「実は、今から20年前に自宅を建て替えるため、Iさん(依頼者の叔父)に
連棟の建物の切り離しに協力してほしい」と依頼したところ、
亡くなったIさんは一切応じず、話を無視されたとのことでした。
そればかりか、このIさんは日常生活でも無言・無視を貫き、
時には庭で水を撒いた際に、自分宅の洗濯物に水がかかっても一言の謝罪もなかったそうです。
「あの人には本当に困らされた」という怒りが伝わってきました。
甥の対応と、ギリギリの着地点
この話を依頼主に伝えると、
「あのおっちゃん、昔から変わり者で、人付き合いがとても悪かったからなあ。
近所づきあいもしてなかったみたいやなあ。ずっと独り身で、晩年は病気がちで・・・
葬式もわしが一人であげたんや」と、寂しげに語っておられました。
最終的に、私と依頼者と土地家屋調査士の3人で再度頭を下げに行き、ようやく隣地の方から
「もとの境界とされるポイントから15cmだけこちらが譲歩する」ことを条件に
「境界確定には応じる」との申し出をいただきました。
結果的にこの依頼主の土地については、間口15cm×奥行き約10mの
約1.5平方メートルが小さくなることになったのです。
依頼者は「叔父がご迷惑をおかけしたのだから・・」とその条件を受け入れ、
無事に話はまとまりました。
買主の建売業者にも納得してもらい、この金額は減額することになり無事解決に至ったのです。
今回最終的には、こちらが譲歩しながらでも境界が確定したことで、
物件として売却が可能となりましたが、万一、隣が応じず境界確定ができなかった場合は、
物件の売却は不能となるか、かなりの値引きをして、それを承知している他の不動産業者に
売却するしかすべがない状況でした。
わずか15cmの影響、しかし資産価値は大きく変わる
今回の話で、この間口15cmの譲歩により、結果として土地の面積も減少。
その分、買主との価格交渉では値引きが発生し、実質的に売却価格が下がる結果となりました。
この依頼主の叔父I さんがもしご近所とうまくお付き合いされていれば、
境界の立ち会いにもすんなり応じていただき、減額もすることなく円満に解決していたものと思います。
改めて隣地所有者とは絶対にトラブルは回避すべきということを自分も肝に銘じた次第です。
まとめ:不動産所有と人付き合いは切り離せない
不動産は、物理的な「土地や建物」だけでなく、そこに関わる「人」との関係性も非常に大切です。
日頃の挨拶、近隣へのちょっとした配慮が、将来の資産価値を守ることにもつながります。
隣地とのトラブルは自分の大切な不動産価値を守るためにも重要なことなのです。
「不動産を所有するなら、まずは隣人との良好な関係づくりから」
これが、私たち不動産業者として、実体験を通じて得た教訓です。