不動産価値を把握しておくことの重要性
2年前のあるお客様からの相談です。
奈良県のK市に依頼者の母が所有する古いアパート(築40年)があり、老朽化が進み12軒中入居者は3軒。
家賃は合わせて月額12万円とのこと。
お母様は80歳を超えておられ、もし相続が発生した場合、相続評価額は土地・建物合わせて約3000万とのことで
地元の不動産業者に売却した場合の想定の価格は1000万円に満たないだろうとの回答だったとのことです。
「このまま相続が発生すれば大変だ。納得できない。なんとか良い方法はないものか?」との相談でした。
不動産を複数所有しているオーナー様にとって、相続のタイミングでまず相談するのは
多くの場合、税理士さんであることは言うまでもないのですが、
相続税の概算を出してもらったり、節税のアドバイスを受けたりするのはとても大切なステップです。
でも、本当にそれだけで大丈夫でしょうか?
税理士さんは相続評価額は算出できても、肝心の実勢の価格の把握はできないのです。
実は相続をスムーズに進めるためには税金のことだけでなく、不動産そのものの価値を
しっかりと把握しておくことがとても重要なんです。

不動産評価額と実勢価格は違う?
税務上の評価額(路線価や固定資産税評価額など)と、実際に市場で売買されている実勢価格には
大きな差が出る場合があります。
たとえば、
● 崖地で使いづらい土地
● 間口が極端に狭い土地
● なかなか買い手がつきにくい特殊な物件
こういった場合、税務評価上は高い金額がついていても
市場ではなかなかその価格では売れないことも・・・
このギャップを知らずに相続を進めてしまうと、相続人同士の分割協議が難航したり
トラブルの原因になることもあるんです。
「税理士+不動産業者」というダブルのサポート
不動産業者に相談すると
◆ 現在の市場価格の目安がわかる
◆ 物件ごとの売却のしやすさや流動性が把握できる
◆ 売却して納税資金を作るべき物件の優先順位が考えられる
◆ 必要に応じて不動産鑑定士を入れて、より精度の高い評価が可能
こういった視点から、より現実的な相続対策を立てることができます。
税理士さんは税務のプロですが、不動産の市況や売買のノウハウまではなかなかカバーできません。
「税理士+不動産業者」というダブルのサポート体制がとても有効です。

不動産業者に相談するメリット
不動産業者に相談すると、相続対策にこんな視点が加わります。
具体的にどんなメリットがあるのか、例を交えてご紹介いたします。
まず、1つめは「今の市場価格がわかる」こと。
たとえば、駅から遠い土地や高低差の大きい土地など、評価額は高くても
実際には買い手がつきにくい場合があります。
こうした情報は不動産業者が地域の取引事例や買主ニーズから教えてくれます。
「この土地は3千万円の評価だけど、実際は1千万円程度が現実的」といった目安がつくんですね。
2つめは、「売却のしやすさ・かかる時間の見通しが立つ」こと。
たとえば、古いアパートがある土地は、建物解体が必要になるケースがあります。
解体費用が数百万円かかること、売却に半年以上かかる可能性など、
事前にわかれば納税資金づくりの計画も立てやすくなります。
3つめは、「優先的に売却すべき物件を選べる」こと。
たとえば、相続物件の中に収益性の悪い空室だらけのアパートがあった場合
そこを早めに売って納税資金や他の資産整理に回す、という判断ができます。
逆に立地がよく、賃貸需要が高い物件はキープしておく、といった資産の組み替え戦略にもつながります。
最後に、「専門家(不動産鑑定士)との連携ができる」こと。
たとえば、崖地や無道路地など特殊な事情がある土地は、鑑定評価を取り入れることで
相続税評価額を正しく下げられる場合があります。
こうしたケースは税理士さんだけではなかなか気づきづらいのですが、
不動産業者を通じて適切な鑑定士さんを紹介してもらえることが多いです。
このように、不動産業者に相談することで、より現実的で柔軟な相続対策が進められるんですね。
特に相続財産として複数の不動産物件を所有されておられる方や、そのご親族の方は
是非信頼できる不動産業者に事前にご相談されることをおすすめいたします。